不動産投資は節税対策になるか?投資の仕組みを解説

当メディアは株式会社グリップをスポンサーとしてZenken株式会社が運営しています。

サラリーマンや医師・士業の方々の間では、節税対策の一つとして不動産投資が注目を集めています。しかし、表面的な節税効果のみを根拠に投資を始めると、数年後の税負担や資金繰りにおいて想定外の事態に直面するリスクがあるので注意が必要です。特に高所得層の場合、単に高い所得税率と減価償却を組み合わせた損益通算の仕組みを把握するだけでは不十分。例えば、土地等を取得するために借り入れた負債の利子が損益通算の対象外となるケースなど、税制特有の注意点も併せて理解しておく必要があります。

本記事では、1棟目から検討しておきたいプライベートカンパニー(資産管理法人)を活用した戦略について、資産防衛の観点から詳しく解説しています。

不動産投資はなぜ節税になるのか?

所得税・住民税が安くなる「損益通算」

不動産投資による節税の最大のポイントは「損益通算」にあります。これは、不動産所得で赤字が出た場合、その赤字分を本業の給与所得や事業所得から差し引いて、個人のトータルの「課税所得」を圧縮できる制度です。

日本の所得税は累進課税制度をとっているため、所得を低く抑えることで適用される税率そのものが下がり、大きな減税効果(還付)が生まれます。また、住民税は前年の所得に基づいて計算されるため、確定申告で今年の所得を圧縮できれば、翌年分の住民税負担も自動的に軽減されます。

不動産投資の魔法「減価償却費」

不動産投資において節税を検討する際、特に重要となるのが「減価償却費」の考え方です。建物の購入費用について、木造住宅用なら22年、RC造住宅用なら47年などの国が定めた法定耐用年数に基づき、期間に応じて分割して毎年経費計上する仕組みを指します。この仕組みを使えば、実際にその年に現金支出が伴わない場合であっても帳簿上は費用として扱えるため、手元にキャッシュを残しながら課税所得を圧縮することが可能となります。

減価償却費のこの特性から、近年、特に高所得者層の間で注目されているのが、築古の中古木造アパートを活用した短期償却です。

法定耐用年数である22年をすべて経過した中古木造物件の場合、簡便法を用いると耐用年数は「22年×20%=4.4年」。1年未満を切り捨てて、4年で償却ができます。たとえば建物価値が2,000万円の物件の場合、定額法を用いれば年500万円の減価償却費を4年間にわたって計上が可能です。本業の所得税率が高い方にとっては、この減価償却によって生じた帳簿上の赤字を給与所得などと損益通算することで、支払済みの所得税が還付される可能性もあります。

ただし、たとえば土地取得に係る借入利子のように、損益通算の対象外となる部分も存在する点にはご注意ください。制度を正しく理解したうえで、確かなシミュレーションのもとで取り組むことが求められます。

参照元:
国税庁タックスアンサー No.5404 中古資産の耐用年数(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5404.htm)
No.2100 減価償却のあらまし(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2100.htm)

不動産投資による節税対策の注意点

「赤字続き」は将来の銀行融資に悪影響を及ぼす

節税ができるということは、税務署に対して「私の不動産事業はうまくいっていません(赤字です)」と申告し続けることと同義です。目先の税金を減らすために大きな赤字を出し続けると、将来的に「銀行融資の審査」で不利になるリスクが生じます。

次の物件を購入しようとローンを申し込んだ際、決算書(確定申告書)が常に赤字だと、銀行から「事業運営能力が低い」「収益性のない物件を抱えている」と評価され、追加の融資や金利交渉が厳しくなるリスクがあります。

年々節税効果は薄れていく

不動産投資の節税効果は永遠ではありません。その最大の理由が、建物の耐用年数が経過すると、魔法の経費であった「減価償却費」が一切計上できなくなるためです。

例えば、築古アパートを短期間で償却した場合、その期間が終わった途端に経費が急減し、帳簿上は突然「黒字」に転換して所得税や住民税が跳ね上がります。

ここで重要なのは、税金は跳ね上がるのに、経費にならない「ローンの元金返済」は毎月引かれ続けるという点です。つまり、「実際のローン返済額」が「減価償却費」を上回ってしまい、帳簿上は黒字なのに手元の現金は税金とローン返済に消えてショートしてしまう「デッドクロス」という黒字倒産のような現象が起きます。これを防ぐためにも、長期的な出口戦略(売却のタイミング等)が必須です。

「土地」の購入費用は減価償却の対象外

減価償却ができるのは、経年劣化によって価値が下がる「建物」と「設備」の部分だけであり、時間が経っても価値が減らない「土地」の部分は償却できません。

そのため、都心の一等地など「物件価格のうち土地の割合が極めて高い物件」を選んでしまうと、投資額の割に計上できる減価償却費が少なくなり、思ったような節税効果が得られません。また、2016年の税制改正により、建物の附属設備についても早期に経費化しやすい「定率法」が廃止され、毎年同額を償却する「定額法」に一本化されるなど、節税ルールが厳格化しています。

ローンの利息で経費計上できる金額は年々減っていく

不動産投資ローンの返済額のうち、必要経費として計上できるのは原則として「利息」部分のみであり、「元本」の返済分は経費に含まれません。そのため、元利均等返済方式(返済の初期段階ほど利息の占める割合が高く、期間が経過するにつれて元本返済の割合が増えていく)を採用した場合、運用期間が長くなるにつれて経費として計上可能な利息額は徐々に減少するため、結果として所得を圧縮できる余地も小さくなっていく点に留意しなければなりません。

加えて注意しておきたいポイントが、土地等を取得するために要した負債利子の扱いです。もちろん土地取得分の借入利子も不動産所得の必要経費にはなりますが、もし不動産所得が赤字となった場合、その利子に相当する損失は給与所得などとの損益通算が認められていません。例えば、地方の一棟物件のように総額に占める土地代の割合が高い物件を選んでしまうと、帳簿上は赤字であっても、損益通算の制限によって期待していたほど税金が戻ってこないというケースが想定されます。節税目的で物件を選ぶ際には、建物や設備の比率だけでなく、土地取得に係る借入利子の影響をあらかじめ詳しく確認しておくことが重要です。

不動産投資による節税が向いているのは?

向いている人(高年収層)

不動産投資による節税で最も恩恵を受けられるのは、適用される所得税の税率が高い「高年収層(課税所得900万円以上など)」です。

日本の所得税は累進課税のため、税率が33%や40%に達している層であれば、損益通算によって高い税率部分の所得を削ることで、数十万円から数百万円単位の大きな税金還付(節税効果)が得られます。現在の重い税負担を軽減しつつ、将来の不労所得やインフレ対策としての実物資産を構築したい、資金的余裕のある方に向いています。

向いていない人(年収がそこまで高くない層)

そもそも所得税や住民税をそれほど多く納めていない層(課税所得が低い方)には、不動産投資による節税メリットは極めて薄いと言わざるを得ません。

節税できる金額よりも、物件の固定資産税や修繕積立金、管理費、そして空室リスクによる実費負担の方が大きくなってしまえば本末転倒です。また、不動産は流動性が低くすぐに現金化できないため、手元資金に余裕がない中で「節税目的」だけで参入すると、突発的な修繕費用などが発生した際に家計が破綻するリスクがあります。

不動産投資で節税するための3つのポイント

1.漏れのない「確定申告」

会社員であっても、不動産投資で節税効果(損益通算による還付)を得るためには、必ず自分で「確定申告」を行わなければなりません。

毎年1月1日〜12月31日までの不動産収支をまとめ、翌年の2月16日〜3月15日の間に税務署へ申告します。この際、家賃収入から減価償却費、管理費、火災保険料、修繕費、借入金利息、さらに物件視察のための交通費などの「必要経費」を漏れなく計上することが重要です。領収書や明細を整理し、正確な収支内訳書を作成することで初めて、納めすぎた所得税を取り戻す権利が生じます。

2.「青色申告」を活用する

さらなる節税効果を狙うなら、事前に税務署へ申請して「青色申告」の承認を受けるべきです。

青色申告を行うと、無条件で10万円(事業的規模であり、電子申告等の要件を満たせば最大65万円)の「青色申告特別控除」が適用され、不動産所得からさらに差し引くことができます。また、家族へ支払う給与を全額経費にできる「青色事業専従者給与」や、発生した赤字を翌年以降3年間にわたって繰り越せる制度など、白色申告にはない強力な節税メリットを享受できます。

3.規模拡大時は「法人化」を検討する

一般的には「不動産投資の規模が大きくなったら法人化する」といった助言がなされることもありますが、本業での年収が1,000万円から2,000万円を超える会社員や医師・士業の方であれば、1棟目の購入段階から資産管理法人(プライベートカンパニー)を活用する選択肢も検討に値します。

個人名義で不動産投資を行い、不動産所得が黒字化すると、その利益は本業の給与所得などと合算されるため、所得税と住民税を合わせた累進課税によって個人の税負担が重くなる可能性がありますが、一定の中小法人であれば、年800万円以下の所得部分に対して軽減税率が適用され、法人税率は15%となります。

もちろん、法人を設立・維持するには、法人住民税や事業税といった税金に加え、設立費用や日々の会計処理といったコストと手間がかかるため、安易に法人化が有利であるとは言えません。しかし、法人名義であれば利益を法人内に残しやすくなり、その利益を2棟目や3棟目の物件を購入するための資金として効率的に再投資することが可能になります。これは高所得層にとって、大きなメリットとなるでしょう。

「黒字化してから法人化」を考えるのではなく、投資の初期段階から個人名義と法人名義それぞれのシミュレーションを比較検討してみるようおすすめします。

まとめ

不動産投資は、減価償却費や借入金利息を活用した「損益通算」によって、所得税や住民税を大幅に軽減できる可能性を秘めています。しかし、本記事で解説した通り、節税効果は年々薄れていくものであり、無理な赤字計上は将来の融資に悪影響を及ぼす恐れもあります。不動産投資はあくまで「事業」であることを念頭に置き、節税はおまけとして、しっかりとした家賃収入(キャッシュフロー)を生み出す物件選びが何より重要です。

なお、不動産投資以外にも、iDeCoやNISA、各種所得控除など、サラリーマンが安全かつ着実に手取りを増やせる節税対策は数多く存在します。ご自身の年収やライフプランに合わせて、最適な対策を組み合わせていきましょう。

高年収特化型FPの資産戦略プロフェッショナル ファイナンシャルアライアンス株式会社

FP相談を
申し込む