高年収特化FPと学ぶ 「守りの資産運用ゼミ」 ~Low Risk, More Money~
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年収1500万円は、給与所得者のなかでも上位数%に入る非常に高い水準です。しかし、高収入であることがそのまま老後の安心を意味するわけではありません。というのも、累進課税による重い税負担に加え、生活水準の上昇に伴う教育費や住宅ローンの膨張が、気づかないうちに家計の余力を削り取ってしまうからです。収入が多いぶん支出も大きくなりやすく、手元に残る資金は想定よりも少ないという構造的な問題を抱えているのが、年収1500万円層の実情といえます。
本記事では、年収1500万円の層が老後破産につながるリスクの構造、および高所得者が取り組むべき節税と資産運用の考え方を整理します。
年収1500万円といえば、給与所得者のなかでもわずかな割合を占める高所得層です。しかし、高収入であることが必ずしも老後の安心につながるわけではありません。というのも、税制の構造や膨らむ生活費、公的支援の恩恵の差が、老後資金の形成を静かに阻んでいるからです。
日本の所得税は累進課税のため、年収が上がるほど税率も高くなります。例えば年収1500万円の場合、所得税や住民税、社会保険料などを差し引くと、手取りはおおむね1,000万〜1,100万円程度にとどまります。額面と手取りの差が400万〜500万円にもなるため、高収入のわりに可処分所得は思ったほど大きくなりません。
国税庁の速算表によれば、課税所得900万円から1,800万円未満に適用される所得税率は33%。収入が増えても手元に残る金額は限られてしまうのが実情です。
高収入に伴う華やかな生活スタイルは、一度確立すると修正が難しくなります。都心の高級マンションでの暮らしや私立学校への進学、接待や交際費といった支出は、それ自体が「あたりまえの水準」として生活に固定化されていくためです。
生活水準を下げることへの心理的な抵抗は、収入が高い世帯ほど強くなりやすいとされています。特に教育費に関しては、私立中高一貫校から私立大学まで進学した場合、累計の学費が1,000万円を超えることも珍しくありません。収入は高いのに毎月の余剰資金が意外と少ない、という状況に陥りやすい層でもあります。
かつて年収1500万円層は、児童手当の所得制限や高校の就学支援金の対象外とされてきました。近年は制度の見直しが進み、児童手当の所得制限撤廃や、高校授業料支援の全世帯対象化などが実施されています。
しかし、大学の授業料無償化や給付型奨学金には依然として所得制限が残っているのが現状。制度改正が続くなかでも高所得層が公的支援に頼れる場面は限定的であり、老後資金の形成も基本的には自助努力に委ねられています。
税率が高い層ほど、所得控除の効果は直接的に大きくなります。現状の家計と相談しつつ、所得控除制度を活用した節税戦略を検討してみましょう。
まず検討したいのが、iDeCoの活用です。iDeCoの掛金は全額が所得控除の対象となるため、所得税率が高い人ほど節税効果が大きくなります。
たとえば年収1500万円層の所得税率は33%以上に及ぶため、毎月2.3万円(年間27.6万円)を拠出した場合、年間で約9万円以上の所得税・住民税の軽減効果が見込めます。老後資金を堅実に積み立てながら毎年の税負担を抑えられるため、特に高所得者にとっては注目したい制度になるでしょう。
なお、iDeCoの掛金については、会社員が月1.2万〜2.3万円、自営業や士業が月6.8万円が上限とされています。
効率よく生活コストを抑える手段として、ふるさと納税も挙げられます。ふるさと納税の控除上限額は年収に比例して上下するため、年収1500万円の高所得層であれば数十万円規模のまとまった控除枠を活用できます。
実質的な自己負担は原則として2,000円のみで、日用品や食料品、地域の特産品などを返礼品として受け取れるため、これら返礼品で生活費の一部を賢く賄うこともできるでしょう。高所得者にとっては、単なる節税というよりも「本来支払うべき税金を通じて、必要な生活コストを返礼品に置き換える」感覚に近いかもしれません。
なお、具体的な控除上限額は家族構成や他の控除の有無によって変わります。ワンストップ特例や確定申告の手続きとあわせ、事前に制度を正しく理解しておくようにしましょう。
不動産投資を活用すれば、建物部分の減価償却費を経費として計上することで、帳簿上の赤字を作り出すことができます。この不動産所得の赤字を給与などの本業所得と合算(損益通算)すれば、全体の課税所得が圧縮され、所得税や住民税の実質負担を抑えることが可能。所得税率の高い医師や士業、大手企業の会社員ほど恩恵を受けやすい制度設計です。
ただし、物件そのものの収益性やローンの返済計画、さらには売却時の課税まで見据えておかなければ、トータルで損失を出してしまうこともあります。あくまでも不動産投資として健全に成立していることが前提の節税対策と考えましょう。
年収1500万円の手取りがあっても、現金のまま口座に置いておくだけでは、ほとんど資産は育ちません。税制優遇の仕組みや不動産を活用した「運用」への発想の転換が、老後資金の形成を左右します。
有効な手段のひとつが、新NISAの活用です。新NISAでは生涯の非課税枠が総額1,800万円(成長投資枠1,200万円・つみたて投資枠600万円)に設定され、運用益や配当に税金がかかりません。年間の投資上限は最大360万円のため、資金を集中させれば5年で枠を埋めることも可能です。
年収1500万円層は投資に回せるポテンシャルがある一方で、税負担や生活費がかさみ、思ったほど手元に現金が残らないケースも少なくありません。そのため、まずは毎月の収支を見直したうえで、現実的に確保できる新NISAの投資枠を把握してみるようおすすめします。
現金をそのまま保有し続けると、物価の上昇とともに実質的な購買力は少しずつ下がっていきます。たとえば年2%のインフレが続いた場合、20年後には現金の実質的な価値は約67%程度にまで目減りする計算です。つまり、老後生活に向けて十分な現金を貯めていたとしても、物価が上がれば実態として資金不足が生じる可能性もある、ということです。
こうしたリスクを避けるためには、インフレを乗り越えながら資産を維持・成長させていく視点が重要です。たとえば株式や投資信託、不動産といった資産に分散投資すれば、インフレに応じた資産の成長につながる可能性があります。
医師や弁護士、大手企業の会社員などは金融機関からの社会的信用が高く、比較的低金利で融資を受けやすい属性です。この特性を活かして不動産などの実物資産を取得し、ローンのレバレッジを効かせながら資産を築く手法は、多くの高所得者に活用されています。
ただし、融資を利用する投資は相応のリスクも伴うため、物件の選定やキャッシュフローの計算、出口戦略まで含めた慎重な検討は必須となる点も理解しておきしょう。
年収1500万円という高い収入があっても、適切な手を打てるかどうかで老後の資産額には大きな差が生まれます。節税の仕組みを知って行動するだけで、将来的に数千万円単位の違いが出ることも珍しくないため、まずは毎月のキャッシュフローを正確に把握したうえで、iDeCoやふるさと納税、新NISAといった身近な制度のなかから、自分の状況に合ったものを一つでも実行に移すことを検討してみましょう。「いつか始めよう」と先送りにしている間にも、高い税率による負担が蓄積し続けていることに注意してください。
もし節税や資産運用の具体的な進め方に迷っているならば、高年収層の家計に精通したファイナンシャルプランナー(FP)などの専門家に相談してみるのも有効な選択肢です。