高年収特化FPと学ぶ 「守りの資産運用ゼミ」 ~Low Risk, More Money~
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年収1,000万円以上の水準を維持してきた医師や士業、会社員にとって、資産1億円は現実的な到達点といえます。しかし、早期退職後の30〜40年という長い時間軸で家計をイメージすると、仮に1億円の資産があったとしても、必ずしも盤石とは言い切れない側面が見えてきます。物価上昇による購買力の低下や退職後の社会保険料の全額自己負担、そして運用益だけでは埋めきれない生活費のギャップなど、避けては通れないいくつかの課題があるからです。
本記事では、資産1億円を維持する「守り」の設計とインフレに対抗するための「攻め」の運用の両面から具体的な考え方を解説します。
資産1億円は、多くの人にとって経済的な一つの到達点といえるでしょう。しかし、早期退職後から30年、40年という長い時間軸で家計を検証していくと、「1億円あれば安心」とは言い切れない現実も浮き彫りになります。
余裕を持って暮らせる人と、そうでない人を分けるのは一体なんなのか。その境界線を具体的に見ていきましょう。
「4%ルール」とは、資産の4%を毎年取り崩しても30年間は資産が尽きないという運用の目安です。これに基づくと、資産1億円であれば年間400万円、月換算で約33万円を生活費に充てられる計算になります。
ところが、現役時代に年収1,500万円前後の生活水準で過ごしてきた世帯にとって、月33万円という金額は現在の暮らしを大きく引き下げることを意味します。住居費や医療費、交際費や旅行といった50代以降も続く出費を考慮すると、4%ルールはあくまで資産が枯渇しないための最低ラインに過ぎません。豊かな生活の質を維持するためには、この数字を鵜呑みにすることはおすすめしません。
在職中は会社が保険料の約半分を負担してくれるため、日々の生活でその重みを意識することは少ないかもしれません。しかし、もし早期退職をすれば、以後は一定年齢まで健康保険料や国民年金保険といった社会保険料を全額自己負担する必要が生じます。
健康保険については、任意継続で退職前の保険を最長2年間維持する方法と、国民健康保険へ切り替える方法の二択になりますが、いずれも自己負担額は在職時の倍程度になることが一般的。国民健康保険料には年間104万円という上限が設けられていますが、退職直後から毎月数万円単位の支出が発生することは避けられません。国民年金も所得に関係なく定額の支払いが生じます。
これらの保険料は、早期退職後のキャッシュフロー計画に大きな影響を与えることを理解しておかなければなりません。
運用益や社会保険料の負担、そして維持したい生活水準という三つの要素を同時に考慮すると、必ずしも「資産1億円があれば安心」とは言えません。資産額だけに目を向けるのではなく、将来受け取る公的年金額や副収入なども踏まえた長期的なキャッシュフローを設計することが、早期退職を安心して迎えるための第一歩となります。
保有資産の総額だけではなく、資産の受け取り方や口座の種類を工夫することで、手元に残る金額は大きく変わります。早期退職を検討するタイミングで、まずは節税対策や出口戦略について確認しておきましょう。
退職金を一時金として受け取る際、「退職所得控除」を適用すれば、他の所得と分けて計算される「分離課税」として扱うことができます。
勤続20年を超える場合、退職所得控除の額は800万円+70万円×(勤続年数-20年)。簡単に言えば、長く勤めるほど控除額が大きくなる仕組みです。
例えば勤続30年であれば控除額は1,500万円。退職金がその範囲内であれば、課税対象となる所得はありません。
勤務先で退職金制度がある場合、どのように受け取るかで老後資金の初期額が左右されます。一時金と年金のどちらを選択すべきか、退職前に専門家に相談して試算しておきましょう。
新NISA制度では、1人あたり1,800万円、夫婦で合計3,600万円までの非課税枠が用意されています。そのため、もし現在の運用口座が一般的な課税口座となっているならば、いったん資産を売却して新NISA口座に移したうえで運用を再開しましょう。新NISA口座で運用すれば、以後、1人1,800万円までの運用から生じる配当や売却益(約20%)が非課税になります。
ただし、いったん売却する段階で利益が出た場合、この利益は課税対象となる点には注意してください。
国民健康保険料は、原則として前年の所得に基づき算定されますが、この保険料を抑えるための有効な方法が、証券会社での資産運用成果について確定申告をしない選択。証券会社の「特定口座(源泉徴収あり)」で得た株式の配当金や譲渡益は、あらかじめ税金が差し引かれています。そのため、あえて確定申告をしなければ、それらの所得は国民健康保険料の算定基礎から除外されます。
逆に、確定申告を行って損益通算や配当控除を受けると、これらの所得が算定に加算されるため、結果として国民健康保険料が引き上がる可能性がある点にご注意ください。
50代以降の資産運用は、「いかに増やすか」という攻めの姿勢から、「いかに安定収益を持続させるか」という守りの姿勢へと運用目的を転換する必要があります。これに伴い、これまでのポートフォリオも緩やかにシフトさせていきましょう。
仮に物価が年1〜2%上昇し続けた場合、現金のまま資産を保有していると、10年で実質的な現金の価値が10〜20%ほど目減りしてしまいます。こうした目減りリスクに備えるためには、資産を預貯金だけでなく、株式や不動産といった物価上昇に強い資産に分散させることが有効です。
例えば株式の場合、企業の利益はインフレと連動しやすいため、株価上昇にも反映されやすくなります。また不動産の場合は、物価上昇に合わせて資産価値や賃料も上昇する傾向があるため、株式と同様に資産の目減りを減らす効果が期待できます。
1億円の資産があるばらば、現金5,000万円を残しつつ、残り5,000万円を運用に回すなど、半分はインフレに強い資産へ移すことも考えてみましょう。
資産を切り崩して生活費に充てていると、手元の残高が少しずつ減っていく様子を目の当たりにするため、心理的な不安を感じる方も少なくありません。そのような不安を和らげる手段として、高配当株やREIT(不動産投資信託)などを活用し、定期的にインカム収入を得られる仕組みづくりを検討してみてはいかがでしょうか。
例えば、高配当銘柄で5,000万円程度の資産を運用すれば、年間で一定のキャッシュフローが見込めるようになります。またREITは賃料収入が分配金の原資となるため、株式市場とは異なる動きをすることがあり、分散投資としての効果も期待できます。
資産残高を大きく減らさずに生活費の一部を賄う仕組みを作れば、経済面はもとより精神的な安定にも直結するでしょう。
日々価格が上下する株式市場ですが、数年に一度、極端な大暴落を演じることがあります。このタイミングで慌てて株式を売却した場合、安い価格で手放すことになるうえ、その後に株価が回復したとしても、その恩恵を受けられません。こうした事態を避けるために有効なのが、余裕を持たせた資金確保です。
たとえば生活費の3〜5年分に相当する部分は現預金として確保しておいたり、あるいは、元本割れのリスクが低い個人向け国債などを「生活防衛資金」に回しておいたりなどし、株式市場の暴落時にも慌てない資金環境を整えておきましょう。
これら予備費の目安としては、例えば月々の生活費を40万円と想定した場合、その3〜5年分にあたる約1,440〜2,400万円ほど。「この資産には手をつけない」という枠が存在すれば、株式相場が暴落したときでも冷静さを保つことができるでしょう。
早期退職直後は、資産を「稼ぐフェーズ」から「管理するフェーズ」への転換期です。1億円という資産は、正しく設計を行えば30〜40年という長い期間の生活を支える土台となります。しかし、インフレや税負担、社会保険料といった要素を考慮せずに放置すれば、資産は少しずつ目減りしてしまう可能性があるでしょう。
出口戦略や節税対策、そしてポートフォリオの再構築などについては、知っているかどうかで将来の結果を大きく左右します。まずは、ファイナンシャルプランナーや税理士といった専門家とともに、今後の収入・支出・運用益を時系列で可視化したキャッシュフロー表を作成してみてください。ゆとりある未来に向けて一歩ずつ準備を進めていきましょう。
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※2026年2月2日調査時点