高年収特化FPと学ぶ 「守りの資産運用ゼミ」 ~Low Risk, More Money~
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年収1000万円を超える層が住宅を購入する際、借入額の拡大や住宅ローン控除の活用を目的にペアローンを選択するケースが少なくありません。しかし、節税や借入額増加というそのメリットの裏側には、見落とされがちなリスクが潜んでいます。なかでも問題が顕在化しやすいのが、離婚のタイミング。ローンの返済義務・共有名義・売却の困難さが一度に押し寄せ、収拾がつかなくなるケースも実際に起きています。
本記事では、ペアローンの主なデメリット、離婚時に発生する具体的なリスク、そして年収1000万層が事前に取るべき対策を詳しく解説しています。
ペアローンとは、夫婦それぞれが同一の物件に対して個別に住宅ローンを契約する仕組みをいいます。その大きな特徴は、2人がともに「主債務者」となり、お互いに連帯保証人を担う点。1本のローンに収入を合算する一般的な「収入合算」とは異なり、ペアローンはあくまで2本立ての独立した契約を結ぶ形となります。
この仕組みが年収1000万円を超える高所得層に選ばれる理由は、主に2つ。まず1つ目は、単独ローンと比べて全体の借入可能額を大幅に引き上げられる点です。そして2つ目は、夫婦それぞれが住宅ローン控除を適用できるため、節税効果を2人分フルに活用できる点にあります。
ペアローンには、高所得層が住宅購入を検討する際に注目しておきたい複数のメリットがあります。以下、主なメリットを4つほど見ていきましょう。
まずは住宅ローン控除におけるメリットです。住宅ローン控除とは、年末のローン残高の0.7%を所得税や住民税から差し引ける制度のこと。ペアローンを利用すると夫婦それぞれがこの制度の適用を受けられるため、単独ローンとは異なり控除額を2人分確保することが可能です。
特に年収1000万円を超える世帯は日頃の税負担が重い分、この控除の恩恵を実感しやすく、毎年の手取り額の改善に直結。控除期間中の累計効果を考えると、借入額や夫婦の借入構成によっては、総額で数百万円規模の差になるケースも珍しくありません。
ペアローンでは夫婦それぞれが融資を受ける形となるため、単独ローンでは手が届かない高額な借入を実現することができます。三井住友トラスト・資産のミライ研究所が2025年に行った調査によると、ペアローン利用者の借入額中央値は約3,419万円。単独ローンの約2,341万円を1,000万円以上も上回っています。
年収1000万円層がこの高い借入力を活かせば、将来的な資産成長が見込める都市部の物件も選択肢に入るでしょう。結果として、優良な不動産を通じた資産形成のスピードを加速させることにつながります。
住宅ローンは他の借入手段に比べて金利水準が低いため、一般的なローンに比べて返済コストを抑えることができます。その分、自己資金を手元に温存できるため、手元に残した資金を投資などに振り向けつつ、ローンによって不動産を取得するというレバレッジ戦略が取りやすくなります。ペアローンはこの有利な枠組みを夫婦2人分に拡張できるため、単独では購入できない規模の物件を低金利で保有し続けることが可能です。
ただし、将来的に金利が上昇した場合のリスクや、それに伴う返済額の変化には十分に注意を払う必要があります。
ペアローンでは夫婦それぞれが独立した契約を持つため、返済期間や金利タイプを個別に設定できるという柔軟性があります。たとえば、収入が安定している一方は長期固定金利を選び、育児や転職などのライフイベントが見込まれるもう一方は短期返済にする、といった戦略的な組み合わせもできます。
月々の返済額をそれぞれの家計の状況に合わせて設計できるため、手元のキャッシュフローを意識した計画的な資金管理が可能になる点は、ぺアローンならではのメリットといえるでしょう。
節税、借入額の拡大、資金効率の改善など、ペアローンは高所得層にとって合理的な選択肢に映ります。しかし、これらのメリットはあくまで返済が順調に続くという前提のうえに成り立っています。そのため、ライフステージの変化に対するリスク管理を怠れば、かつてのメリットがそのまま大きな負担へと転じかねません。
ペアローンには、その契約構造ゆえに、いくつかの避けられないデメリットが存在します。
まず、将来的に片方の収入が減少した場合であっても、それぞれのローン返済義務がなくなるわけではない点です。そのため、育児や休職、予期せぬ病気などでどちらか一方の収入が途絶えてしまうと、家計への圧迫は即座に表面化することになります。
次に、契約が2本立てになることから、事務手数料や印紙代、登記費用といった諸費用が単独ローンの約2倍かかってしまう点です。また、団体信用生命保険(団信)はそれぞれが個別に加入する形をとるため、万が一どちらか一方が亡くなったとしても、もう一方の側に残ったローンはそのまま残る点にも留意しておきましょう。
さらに、将来的に物件を売却したりローンの借り換えを行ったりする際には、共有名義人全員の同意が必要となります。そのため、もし一方が拒否すれば手続きを一切進められない、という柔軟性の低さも見落とされがちなリスクといえます。
ペアローンにおいて、特にリスクが顕在化しやすいのが離婚。婚姻関係が解消されてもローン契約はそのまま継続されるため、さまざまな問題が同時に発生することになります。
離婚は、あくまで夫婦という法律関係を解消する手続きにすぎません。一方で住宅ローンの契約は金融機関との間で交わした別個の取り決めなので、離婚してもそれぞれの債務は残り続けます。
そのため、どちらか一方が家を出て住まなくなったとしても、その人のローン返済義務はそのまま継続。仮に住み続ける側が「これからは自分がすべて払う」と口頭で約束したとしても、それは夫婦間の合意にすぎず、金融機関に対しては通用しません。
離婚後も2人が揃ってローンに縛られ続ける構造は、ペアローンにおける大きな落とし穴のひとつといえます。
ペアローンで購入した不動産は夫婦の共有名義となるため、離婚後にどちらか一方が住み続けるケースであっても、住んでいない側の持分が不動産に残ったままとなります。
この状態のままでは、住んでいない側も依然として固定資産税の負担義務を持ち続けることになるほか、将来的に住んでいない側が再婚したり死亡したりした場合に、その持分が第三者へ移転してしまう可能性があります。
また、離婚時の財産分与を算定するにあたっては、不動産の現在評価額とローン残高の兼ね合いが非常に複雑になるため、話し合いが長期化するケースも少なくありません。
共有名義となっている不動産を売却するには、名義人全員の同意が必要となります。そのため、たとえ一方が早期の売却を希望したとしても、もう一方がそれを拒否すれば手続きを前に進めることはできません。
また、購入時よりも不動産の市場価値が下落している場合には、売却価格がローン残高を下回る「オーバーローン」の状態に陥ってしまい、通常の売却方法では残債を完済できなくなります。こうしたケースでは、金融機関の承諾を得たうえで「任意売却」という手続きを検討する必要がありますが、任意売却の可否は金融機関の判断によって異なるうえ、仮に住宅ローンの滞納が生じている場合には信用情報へ影響が及ぶ可能性もあります。
ペアローンでは夫婦が互いの連帯保証人となるため、万が一どちらか片方が返済不能に陥った場合、もう一方に対してその分の返済義務が生じます。つまり、1人で2人分の住宅ローンの返済負担を負うことになる、ということです。
二重の返済負担に対して滞納不能となれば、最終的には信用情報に傷がつく可能性があるでしょう。一般の会社員にとっても深刻な問題ですが、特に医師や弁護士、税理士といった士業、あるいは日頃から金融機関と深く取引を行う職種の方にとっては、信用情報へのダメージがそのまま職業上の信用失墜にも波及しかねません。
離婚後のペアローンにおいては、典型的なトラブルがいくつか繰り返されています。なかでもよく見られるのが、夫がそのまま家に住み続ける一方で、妻名義のローンが解約されずに残ってしまうケース。この場合、妻はすでに住んでいない家のローンを払い続けることになるため、自身の新しい生活費との二重負担に苦しむことになります。
次に多いのが、不動産売却の失敗です。離婚のタイミングで市場価格がローン残高を下回るオーバーローン状態に陥っていた場合、物件を売っても残債が消えないため、処分することもできず身動きが取れなくなってしまいます。
そしてさらに深刻なのが、どちらか一方が返済を滞納することで生じる信用情報へのダメージです。支払いの滞納が続けば、連帯保証人であるもう一方の元配偶者にも容赦なく督促が及び、最悪のケースでは物件が競売にかけられるという結末を迎えることもあります。
ペアローンのメリットを享受しつつ潜んでいるリスクを抑えるためには、ローンを組む前の設計段階での判断が極めて重要になります。以下では、将来のトラブルを防ぐための柱となる5つのポイントを整理していきます。
ペアローンを組む前に、まずは単独ローンを検討してみましょう。単独ローンを検討する際には、借入可能額の上限まで借りられることと、無理なく返済を続けられることは同じではないことを再確認してください。上限近くまで借りた場合、将来どちらか一方の収入が減ると返済負担が一気に重くなる可能性があるため、借入額は慎重に検討しましょう。たとえば単独ローンを前提に予算を組み、必要に応じて頭金を増やすことで、将来の返済負担を軽減させることが可能です。
ペアローンのメリットだけに注目せず、返済を続けやすい借入方法も選択肢に入れましょう。
ペアローンを利用する際には、それぞれの実際の借入額に応じた持分割合で不動産を登記することが不可欠です。万が一、実際の返済負担割合と登記上の持分割合がずれてしまっていると、その差額分が実質的な贈与とみなされ、思わぬ贈与税が課される可能性があるからです。
たとえば、夫が6、妻が4の比率でローンを借り入れたのであれば、登記上の所有権持分もその割合にぴったり合わせるのが原則。住宅ローンと所有権持分の割合を一致させておくことは、将来的にローンの借り換えや売却、あるいは財産分与を行う場面になっても、法的なトラブルを未然に防ぐ基本的な防衛策となります。ぺアローンの契約を結ぶ前の段階で専門家を交えて確認しておくようにしましょう。
万が一離婚に至った場合の取り扱いについて、あらかじめ書面で明確にしておくことも有効です。公正証書などの法的効力を持つ文書に売却・返済継続・名義変更の条件を明記しておけば、離婚時の協議が長期化するリスクを抑えられるでしょう。
ただし、公正証書はあくまで夫婦間の取り決めを記したものであり、金融機関とのローン契約そのものを上書きするものではありません。そのため、書面に残した内容と実際のローン契約との関係性を正しく理解した上で、専門家のサポートを受けながら整備を進めることをおすすめします。
ペアローンでは、夫婦それぞれが別々に住宅ローンを契約するため、どちらか一方が亡くなった場合でも、残された人が契約しているローンはそのまま残ります。つまり、亡くなった人のローンは団信によって完済されますが、もう一方のローンまで自動的に消えるわけではありません。そのため、残された家族の返済負担に備える目的で、夫婦それぞれが生命保険の保障額を見直しておくことをおすすめします。
なお、金融機関によっては、夫婦のどちらか一方に万一のことがあった際、2人分のローン残高がゼロになる「連生団信」を扱っている場合もあるため、契約前に確認しておくとよいでしょう。
住宅ローンは数十年にわたる長期契約です。そのため、将来のライフイベントや市場環境の変化に応じて、売却や賃貸、借り換えといった多様な選択肢をいつでもとれる状態を維持しておくことが重要です。
特に、物件の市場価値がローン残高を下回る「オーバーローン」に陥ってしまうと、売却の自由度が著しく下がってしまうため、購入の時点から物件の資産価値と借入残高のバランスを意識した計画が求められます。
この点、年収1000万円層であれば手元資金に余裕がある場合も多いため、状況に応じて繰り上げ返済を行うことで、ローン残高を早期に圧縮しておくことも可能です。あらかじめ残債を減らして選択肢を広げておくという戦略は、現実的かつ有効な防衛策となるでしょう。
ペアローンは、節税と借入額の拡大を同時に実現できる大きなメリットがある一方で、将来の収入減少や離婚といったリスクに対して構造的に脆弱な面を持つ金融商品でもあります。
年収1000万円層ほど、現在の高い支払い能力から「これくらいなら返せるだろう」という判断が先行しがちになりますが、本当に重要なポイントは「いくら借りられるか」ではなく、「どんな状況に直面しても家計を維持できる設計になっているかどうか」です。万が一の離婚といった最悪のケースまであらかじめ想定し、冷静にプランを組み立てておくことこそが、結果的にリスクを抑えた賢い住宅購入につながります。
ペアローンを含む適切な住宅ローンの設計や、年収1000万円層が取り組むべき総合的な資産管理については、高年収層のライフスタイルに特化したファイナンシャルプランナー(FP)へ相談することも、判断の精度を格段に高める有効な手段のひとつになるでしょう。詳しく知りたい方は、ぜひ以下よりご覧ください。